テクノロジーが拓く「共生社会」(№376)
コロナ禍の中、2020東京オリパラが無事開催されました。パラアスリートの想像を超えた素晴らしいパフォーマンスに驚かされました。アスリートの努力はもちろん、競技用車椅子や義足など、先端技術によって性能が向上し、記録やパフォーマンスが急速に向上しています。
国は、「障害者基本法」で「個人の尊厳が重んぜられ、社会の一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられる」と宣言し、目指す社会として、障害の有無にかかわらず、誰もが人格と個性を尊重し支えあう「共生社会」を挙げています。
共生社会の実現には、社会インフラの整備と、個々の障害によるハンディの軽減が必要です。東京オリパラの開催を機に、バリアフリー化など社会的弱者のための社会インフラの改善はかなり進展したといわれています。
近年、デジタル技術の発展は目覚ましく、社会活動のあらゆる分野でIoT(モノとインターネット)やAI(人工知能)がなければ何も始まらない状況です。障害者や高齢者のための社会インフラ整備においても必要不可欠です。国の「Society5.0」構想で提唱されている、社会インフラ改善のための具体例が「スマートシティ」構想です。「都市内に張り巡らされたセンサー、カメラ、スマートフォン等を通じて、環境データ、設備稼働データ、行動データなどを収集、統合してAIで分析し、必要に応じて設備、機器などを遠隔操作することで、都市インフラ、施設、運営業務の適正化、企業や生活者の利便性、快適性の向上を目指すもの」です。すでに自治体や企業が取り組んでいます。
また、テクノロジーは、弱者の目耳手足になり得ます。障害による社会参加への壁を壊そうと、多くの研究開発が行われています。例えば、視覚障碍者が一人で街中を移動できる「スーツケース型ナビゲーションロボット」です。複数のレーザーセンサーが周囲を360度認識し、障害物や歩行者までの距離を測定する。スマホから音声で情報を伝えてくれ、連動して取っ手部分の側面が振動し進行方向を教えてくれます。すでに実証実験が行われています。
もう一つは「分身ロボット」です。カメラ、マイク、スピーカー等が搭載され、インターネットを介した遠隔操作で、自由な移動動作が可能なだけでなく、ロボットを通じて、身振り手振りを交えて自然なコミュニケーションが可能です。すでに障害者の分身ロボットが接客するカフェが東京日本橋に開店しています。そこからテレワークでの受付業務などで、企業に就職する障害者も出てきています。
近い将来、本当の「共生社会」が実現できることを期待したいものです。
(だだんだん)