人を残すということ(№368)
金を残して死ぬのが下
事業を残して死ぬのが中
人を残して死ぬのが上
江戸末期から昭和初期にかけて活躍した医師、政治家である後藤新平の言葉です。台湾総督府民政長官として台湾の近代化に尽力したり、帝都復興院総裁として関東大震災後の東京都市計画を立案し遂行したり、功績には枚挙にいとまがありません。また、後藤新平はたくさんの名言を残しており、東京都の小池百合子知事がよく彼の言葉を引用して演説をしています。
冒頭の言葉は、後世にお金を残すより事業を発展させること、事業を発展させることより優秀な人材を育てることこそが最も尊いことであるという意味です。人材こそ最も大切であるという自然の摂理を表す言葉で納得してしまいます。
私の若かりし頃は、良き師に恵まれ、自分のスキルを上げていくことしか考えられませんでした。管理する側になって初めて、売り上げ、業績、スタッフのことを考え始め、5年前の師の急逝が考え方の転機になりました。師の代わりにという思いで、学んだ技術を継承、発展させるため県外や国外に赴き、後進の指導に力を入れてきました。そして本年、教育を目的とする非営利団体の中で私の取り組みを広める機会を得ました。ここでは、『人を遺すのが上である』という言葉をKey
wordに専門領域の指導に当たります。
社会医療法人仁生会でいうと、仁生会の経営状態を上向かすのが下、仁生会を継続して次世代に残すのが中、仁生会を発展させていく人材を育てるのが上といったところでしょうか。どれもすべて重要ですが、やはり何よりも人材が一番大切だと感じます。目まぐるしく変わっていく医療業界の中で、常に患者さんや職員の皆さんのニーズを正しく捉えながら変化を起こしていくのは、お金でも組織でもなく人だからです。
皆さんは、この後藤新平の言葉にどのような思いを持つでしょう。立場によって捉え方は千差万別ですが、今一度、『人を育てる』、『人を残す』ことについて考えてみませんか。
(狗巻棘)