電子カルテの使い方(№342)

 使わざるを得なくなったのでつらつらと負けおしみを言っておく。
 まだ日本に数百台しか業務用コンピューターがないころ、会社の指示で、数ヶ月電子計算機の夜学に通って勉強した。その結果、まだ会社に導入するのは早いという結論を報告した。その時は、結局そのコンピューターシステムは、全国的に不評で面目を施した。
 医療における電子カルテの出自は、基本的に、医事業務から発生した。それが、他の部門にも波及して、とうとう、医師や看護師のところに押し寄せてきた形である。基本的に、コンピューターシステムは精緻性(融通が利かない)を旨とする。その結果、曖昧な部分や判断を要する部分などは、すべて医師と看護師に押し付けるシステムである。これに対抗する手段として、マニュアルが存在するが、これが説明文にしか過ぎない。実はマニュアルとは3つの要素を持つべきものである。すなわち、①説明書、②フローチャート、③チェックリストである。日本のマニュアルたるものは、説明書にしか過ぎない。しかも電子カルテは医師や看護師の側から作っている訳ではない。今の電子カルテの決定的欠点は、3番目のチェック機能がないという点である。がん検査の結果の見落とし等、防止するのはシステム的にはごく簡単であるが、現在の電子カルテにはそれがない。最終的に医師がすべてのデータを見て、対応すべきであるという代物である。40人以上の入院患者の定期検査をすべて医師が診る。以前は紙媒体が目の前に届けられ、検査する人も、看護師も診てくれていた。これからは、医師は検査結果に関し、いつ出てくるかも管理しなければならない。看護師に見る義務はないわけであるから、もう助けてもらうわけにはいかない。といってソフトメーカーが悪いわけではない。ただ、全国の医師が一人当たり2万円も出してソフトを作ればいいだけの話であるのが悔しいところである。
 文句を言って少しすっきりした。機械如きに負けるつもりはない。

(アナクロ)

2019年02月27日